ラッカーとトップコートのウレタン塗料はNG!クラッキングの原因と対策

塗装の仕上げ作業としてウレタン塗料を選択することは、光沢や耐久性を高めるためにも重要なことです。

しかし下地にラッカー塗料を使用している場合、トップコートにウレタン塗料を重ねると、クラッキング(ひび割れ)が起こりやすくなります。

この記事では、クラッキングを起こさないための具体的な手法を、クラッキングが起こるメカニズムと併せて解説します。

目次

1.ウレタン塗料のトップコート時のクラッキング原因
2.ラッカー塗料xウレタン塗料でクラッキングが起きる理由
3.硬化不良でクラッキングが起こるメカニズム
4.閉じ込められた溶剤でクラッキングが起こるメカニズム
5.ラッカーにウレタンを重ねた際に起こる現象
6.塗料の組み合わせで防ぐ方法
7.吹き付け方で防ぐ方法
8.まとめ

ウレタン塗料のトップコート時のクラッキング原因

塗装におけるクラッキングとは、塗膜に「クラック」と呼ばれるひび割れが起こる現象をさします。

ひび割れにも塗膜のみに生じるものは「チェッキング」または「ヘアークラック」といい、深いひび割れのことを「クラック」といいます。

チェッキングやヘアークラックは軽微なひび割れですが、クラックは深いひび割れを指すため、補修の緊急性は高いです。

この危険なひび割れを引き起こすひび割れ現象の根本原因は、主に二つの要因が考えられます。

要因1|閉じ込められた溶剤

塗料にはシンナーのような溶剤が含まれていますが、塗布後に乾燥させる過程で溶剤が蒸発し、塗膜は硬化します。

そのため下層の溶剤が完全に蒸発してから重ね塗りをするならば、一般的にひび割れ現象は起こりません。

しかし溶剤が蒸発しないまま塗料を重ねてしまうと、本来蒸発すべき溶剤は塗膜によって閉じ込められます。

この時に閉じ込められた溶剤が塗膜の下から無理やり蒸発しようとすると、ひび割れが起こります。

要因2|接着力の問題

硬化した塗膜は、温度の変化によって伸縮します。正常な状態であれば塗膜は下地にしっかりと密着しているため、温度の変化が起きても素材の伸縮に追従します。

しかし塗膜の接着力が弱いと、塗膜本来の接着力(密着性)が発揮できません。

この状態で下地が素材の伸縮に合わせて動いてしまうと、密着していない塗膜は伸縮できずにひび割れします。

このように塗膜の接着力に問題がある場合は、ひび割れ現象が起こりやすいです。

ラッカー塗料×ウレタン塗料でクラッキングが起きる理由

「下地にラッカー塗料+上層にウレタン塗料」の組み合わせでは、ひび割れ現象が起こりやすいです。

そのためラッカー塗料とウレタン塗料の組み合わせは、一般的にNGとされています。

主な原因には溶剤や接着力にありますが、組み合わせによってひび割れ現象が起きる場合は、両者が持つ特性の違いが原因です。

塗料特性の違いが影響する

ラッカー塗料とウレタン塗料は、乾燥方式が違います。

ラッカー塗料は、揮発乾燥型と呼ばれる乾燥方式です。溶剤が揮発することで塗膜が硬化するため、単純な構造といえます。

これに対してウレタン塗料は、主剤と硬化剤が化学反応を起こすことによって塗膜を作る(乾燥する)反応硬化型です。

以上のことから、乾燥後の特性も、両者では違いがでてきます。ラッカー塗料は可溶性のため、一度固まっても溶剤に触れると容易に溶けてしまいます。

これに対してウレタン塗料は、不溶性です。そのため溶剤にはもちろん、熱にも強い特徴があります。

このようにラッカー塗料とウレタン塗料は乾燥方式や再溶解性が大きく違うため、組み合わせるとひび割れ現象が起こりやすいです。

タイプ 乾燥の方法 特長
揮発乾燥型(ラッカー塗料) 溶剤が揮発するだけの単純な乾燥方法 乾燥が早いが、溶剤に弱い
反応硬化型(ウレタン塗料) 溶剤と硬化剤の化学反応による乾燥方法 溶剤に強く、塗膜も強い

硬化不良でクラッキングが起こるメカニズム

ウレタン塗料は本来、主剤と硬化剤が結びついて架橋反応(鎖状の分子を網目状に構造することで連結すること)を起こします。

しかし硬化剤は、主剤よりもアルコールの方に反応しやすい特長があります。

そのため硬化剤がアルコールと反応すると、主剤は硬化剤にくっつくことができません。

ウレタン塗料の硬化に必須な化学反応が正常に行われないと、表面は柔らかいままになってしまいます。

このような硬化不良な状態で重ね塗りすると、ラッカー塗料の下層が動き、表面にひび割れ現象が起こります。

閉じ込められた溶剤でクラッキングが起こるメカニズム

ウレタン塗料は、主剤となるウレタン樹脂と硬化剤であるイソシアネート類の化学反応によって塗膜を形成します。

そのため希釈のためにウレタンシンナーを使用しますが、使用するウレタンシンナーは溶解力が非常に強力です。

そのためラッカー塗料の上にウレタン塗料を重ねると、ウレタンシンナーがラッカー層を攻撃し、硬化していた塗膜を液化してしまいます。

液化したラッカー塗膜の上でウレタン塗料は固まり「膜」を作るため、下にあるラッカー塗料の溶剤は蒸発することができません。

さらにウレタン塗膜の下ではガスが発生し、結果としてひび割れが発生します。

ラッカーにウレタンを重ねた際に起こる現象

「ラッカー塗料の下地」に「ウレタン塗料のトップコート」は、相性の悪さから組み合わせて使用するのはNGです。

しかしながら「いつもと同じ工程なのに、今回に限ってクラッキングするのはなぜなのか」という意見が数多く寄せられます。

ではNGの組み合わせで塗装した場合、どのような現象が起きるのでしょうか。

1回目の塗装で起きる現象

ラッカー塗膜の上にウレタン塗装しても、ウレタン塗膜は化学反応によって硬化するため強制的に乾きます。

しかし下膜であるラッカー塗膜は、ウレタン塗料に含まれている溶剤に触れることで溶けてしまいます。

つまり硬くなった状態から、再び液体の状態に変化するのです。液化したラッカー塗膜は、空気に触れれば乾燥します。

しかし上部をウレタン塗膜によって蓋をされているため、乾かない(硬化できない)状態になります。

1回目で陥りがちな勘違い

1回目の塗装後は、意外にも見た目はきれいな状態です。これはウレタン樹脂が持つレベリング性によるもので、表面はつややかで美しく、光沢もあります。

レベリングとは平坦になる力のため、下層のラッカー塗膜が液化した状態でも、ウレタン塗膜は美しいです。このような見た目の美しさは、1回目の塗装で陥りがちな勘違いといえます。

しかしこの段階ですでにウレタン塗膜はラッカー塗膜に浸透し、液化が進行しています。残念ながら、下層の状態はウレタン塗膜からでは目視できません。

そのため塗装経験が浅い初心者などは、「ラッカーにウレタンを重ね塗りしても問題はない」と勘違いしがちなのです。

2回目の塗装で起きる現象

2回目の塗装で起こる現象は、塗布後数十分~数時間経過した時点で起こります。

すでに1回目の塗装によって下地のラッカー塗膜は、正常に硬さを保つことが非常に難しい状態です。

この状態で2回目の塗装を施すことは、結論からいうと「溶剤を追加すること」になります。

ラッカー塗料は溶剤に弱い特性があるため、追加された溶剤によってラッカー塗膜は硬さを保つことができなくなります。

するとラッカー塗膜が動き出し、硬化したウレタン塗膜は深いひび割れが起こります。

この段階では、塗り直しによる補修は不可能です。修復するには、塗膜をすべて研磨し、下地から塗装しなおす必要があります。

なお2回目の塗装では、艶だしを目的に厚塗りすると同じ現象を引き起こすことがあります。

塗料の組み合わせで防ぐ方法

塗料を重ね塗りする際のひび割れ現象を防ぐには、塗料の相性に注目する必要があります。

ラッカー塗料とウレタン塗料を組み合わせる場合、下地がウレタン塗料でトップコートにラッカー塗料であればひび割れ現象は起こりません。

しかし本記事で取り上げている「下地にラッカー塗料・トップコートにウレタン塗料」は、確実にひび割れ現象が発生します。

その理由は、「下地とトップコートの関係」にあります。

下地とトップコート

下地とトップコートの組み合わせは、塗料の強さに注目してください。原則は、「下層より強い塗料を上に塗らない」です。

例えばラッカー塗料とウレタン塗料の組み合わせも、「下地にウレタン塗料・トップコートにラッカー塗料」だとひび割れは起こりません。

これはウレタン塗料が溶剤に強い特性を持つため、ラッカー塗料の溶剤が浸透しないからです。

ところが「下地にラッカー塗料・トップコートにウレタン塗料」では、下層のラッカー塗料が溶剤に溶けやすいためひび割れが発生します。

なお下地とトップコートを同系統にする方法も、ひび割れ現象の対策になります。

トップコートにラッカー塗料を使用したい場合、下地もラッカー塗料にすれば親和性が高いため、ひび割れ現象は起こりません。

同様にトップコートをウレタン塗料にしたい場合も、同系統のウレタン塗料を下地にする事で解決が出来ます。

吹き付け方で防ぐ方法

ラッカー塗料の上にウレタン塗料を重ねることは、基本的にNGです。

しかしカラーリングの関係で、どうしてもラッカー塗料の上にウレタン塗料を重ねたい場合もあるでしょう。

このようなケースでは、溶剤の浸透を物理的に遮断する吹き付ける技法がおすすめです。

吹き付け方のポイント

1回目の塗装で、ウレタン塗料を薄く吹くように吹き付けます。

さらに塗布後は、1回目の溶剤を完全に飛ばす乾燥時間(フラッシュオフタイム)が必須です。

乾燥時間は塗装環境や温度・湿度にもよりますが、最低でも15分~20分は確保しましょう。

このような吹き付け技法を、「砂ふき」と呼びます。これは、表面が砂のようにざらざらした状態になることに由来します。

砂ふき技法を数回繰り返すことによって、ラッカー塗膜を保護する薄い殻のような膜が出来上がります。

下地の塗料 トップコートの塗料 相性 解説
ウレタン ラッカー 〇(可) ウレタンが溶剤に強いため、ラッカーの溶剤が浸透しない
ラッカー ウレタン ✕(厳禁) ほぼ確実にクラッキングが起こる
ラッカー ラッカー 〇(可) 親和性が高いため、クラッキングは起こらない
ウレタン ウレタン 〇(可) 親和性が高いため、クラッキングは起こらない

この薄い塗膜の層がラッカー層の保護膜となるため、保護膜の上からウレタン塗料を通常の塗り方で塗ってもひび割れ現象は起こりません。

まとめ

いかがでしたでしょうか?この記事では、クラッキングを起こさないための具体的な手法を、クラッキングが起こるメカニズムと併せて解説してきました。

ラッカー塗料にウレタン塗料を重ねることは、乾燥のメカニズムからみてもNGです。そのためひび割れ現象を防ぐためにも、可能な限り下地とトップコートは同一系統の塗料で統一しましょう。

どうしても「ラッカー塗料」+「ウレタン塗料」の組み合わせが必要な場合は、薄い膜を幾重にも重ねて塗布するなど、技術でカバーするのがおすすめです。

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