
DIY塗装|絵具感覚を卒業しプロ級の仕上がりを目指す下地と塗料の基礎知識
DIY塗装を成功させるには、塗装技術ももちろんですが、マインドセットの転換が必須です。重要なことは、「色を塗る」という概念を「表面を作る」に変換することにあります。
塗装業界では「仕上がりの8割は下地で決まる」という格言がありますが、なぜ色をのせていない準備段階がそれほど重要なのか。
その真意が何に基づくのかを理解し、下地工程の正体を知ることはDIY塗装成功の近道です。
この記事では、「なんとなく塗って失敗」というDIY塗装初心者が陥る事象を防ぎ、論理的にプロ級の仕上がりを導き出す方法を解説します。
目次
1.【絵の具とDIY塗料】決定的な違い
2.DIY塗装における下地の常識
3.DIY塗装における塗料選びの基本
4.DIY塗装における塗りの基本
5.まとめ
【絵の具とDIY塗料】決定的な違い

幼少期の図工などで慣れ親しんでいる絵具とDIYで使用する塗料は、似て非なるものです。
この違いを理解せずに作業を進めることで起こりやすいのが初心者ならではの失敗で、さまざまなトラブルの原因となります。
初心者ならではの失敗を防ぐためには、絵具とDIY塗料の違いを理解することが重要です。
塗装で色が定着する(つく)仕組みの違い
絵具で塗る対象物は、主に紙です。紙には繊維と繊維の間に微細な隙間があり、色は絵具の水分とともに繊維の奥まで染み込むことによって定着します。
これに対して、DIY塗装の対象物は鉄やプラスチック・コンクリート・既存の塗装面であり、これらは基本的に色が染み込む隙間がありません。
そのため塗料が定着するためには、素材の表面に樹脂の膜を作り塗料を密着させる必要があります。
塗料が密着するためには、科学的な結合や物理的な引っ掛かりが欠かせません。
そのため塗面をいかに塗料が密着しやすい状態にするかが、塗料を定着させる(色を付ける)カギとなります。
素材によって塗る塗料を見極め、下地からの塗装工程を確実に行うことが重要かつ綺麗な仕上がりになる重要な要素といえるでしょう。
乾燥と硬化の違い
絵具は含ませた水分が蒸発すれば乾燥(乾いた状態)となりますが、DIY塗料では乾燥とは別に硬化という概念があります。
特にプロ仕様の塗料や2液型塗料は、溶剤が蒸発するだけでなく化学反応によって成分同士が網目構造を形成することで、表面がプラスチックのような硬い膜に変化します。
しかし硬化の段階では、中の層まで乾燥していません。
あくまでも見た目の乾燥と性能を発揮するための硬化は別物であるため、塗料ごとに定められた乾燥時間を守ることがDIY塗装での失敗を防ぐことになります。
厚みによるリスクの違い
絵具は厚塗りすることによって油絵のような質感になりますが、DIY塗装において厚塗りは失敗の原因にしかなりません。
塗料を厚塗りした場合、「液だれ」「縮み」「乾燥不良」のリスクが発生します。
液だれは、厚塗りした塗料が重力に耐え切れず、塗装面が涙を流したように垂れる現象です。
液だれを解消しようと乾ききる前に厚塗りしてしまうと、溶剤が下の層を侵食し、表面が縮み(しわしわになり)ます。
さらに厚塗りは、乾燥不良も引き起こします。
塗料は溶剤が表面から抜け出すことによって乾燥しますが、抜け出す前に表面が硬化してしまうと、溶剤が抜け出せず内部は乾くことができません。
このように塗料の厚塗りはさまざまなリスクの原因となるため、DIY塗装では厳禁です。
DIY塗装における下地の常識

塗装業界において「仕上がりの8割は下地で決まる」との格言がありますが、これは決して大げさな表現ではありません。
高級塗料や高性能な器具を使っても下地作りを疎かにすれば、初心者でなくとも高確率で失敗します。
足付けは必須
下地作りの基本となる「足付け」とは、塗装する面にやすりやサンドペーパーなどで細かな傷をつける工程のことです。
あえて傷をつけるのは、塗料が微細な溝に入り固まることによって、錨を下したような状態を作ることに目的があります。
この状態を「アンカー効果」といい、塗料が剥がれにくくするには欠かせません。
足付けを行わずに塗装すると塗料が表面を滑ってしまうため、爪でひっかくだけで簡単に剥がれてしまいます。
しかし足付けした表面は塗料ががっちりと食いついているため、衝撃や振動でも剥がれません。
そのため足付けは下地作りでも非常に重要な作業で、車やバイクの塗装であれば、表面のツヤが消え曇る程度まで磨く必要があります。
脱脂なしの塗装は厳禁
塗装において、油分は天敵です。車・バイクのワックス成分や排気ガスの油膜、パーツクリーナーの残り、さらに人間の手の脂なども塗料は弾いてしまいます。
しかも弾いた部分はクレーター(ぽつぽつとした穴)となるため、美しい塗面とはなりません。
この状態を避けるためには、足付けの後に専用の脱脂剤を使って表面の油分を完全に除去する必要があります。
なお脱脂した後に素手で触ると手の脂が付いてしまうため、ニトリル手袋を必ず着用しましょう。
プライマーとサーフェイサーの使い分け
塗装の専門用語にある「プラサフ」はプライマーとサーフェイサーを組み合した言葉ですが、このふたつには異なる役割があります。
プライマーは塗装したい素材と塗料を接着させるボンドの役割があり、塗料がのりにくい素材の塗装では必須です。
例えばガラス・メッキのような素材自体が密着しずらい素材の上から塗装する場合プライマーを使用します。
プライマーは塗料自体の肉持ちはありません。
サーフェイサーは表面の微細な凹凸を埋め、ペーパーの跡を消すファンデーションのような役割があります。
例えば車のボディー塗装前や下地素材の錆を抑えるために使用したりします。
そのため下地作りでは、用途に合わせてプライマーとサーフェイサーを使い分けることが重要です。
なお初心者には、プライマーとサーフェイサーの役割を併せ持つ下塗り塗料(ウレタンサフェーサー)がおすすめです。
DIY塗装における塗料選びの基本

DIY塗装に欠かせない塗料は、ホームセンターでも購入できます。
塗料のタイプは水性塗料と油性塗料に分かれますが、選ぶ際には用途に注目することが重要です。
例えば室内の壁塗装では水性が定番ですが、車・バイクのような過酷な環境下には油性塗料が定番です。
そのほかにも1液型ウレタン・2液型ウレタンがあり、その違いに注目することも塗料選びでは重要になります。
1液型ウレタンと2液型ウレタンの違いで選ぶ
スプレー塗料や缶入り塗料には、1液型ウレタンと2液型ウレタンがあります。
1液型ウレタンは、そのまま塗るまたはうすめて塗る塗料です。
手軽に使用できますが、完全に硬化した後もガソリンや強力な溶剤がかかると溶けてしまうリスクがあります。
2液型ウレタンは、使用する前に硬化剤を混ぜる塗料です。
化学反応によって固まるのが特徴で、極めて強靭な膜を作ることができます。
そのため車・バイクのタンクや屋外の塗装など高度な耐久性が求められる場合は、2液型ウレタンの使用がおすすめです。
メタリックとパールは構造の違いで選ぶ
色に注目するならば、ソリッドカラー(単色)以外にメタリックカラーやパールカラーから選ぶこともできます。
しかしメタリックカラーとパールカラーは、色が異なるだけでなく塗り方も異なる点に注意が必要です。
メタリックカラーは、塗料の中に微細なアルミ紛が入っているのが特長です。
そのため均一に吹き付けないとアルミの並びが乱れてしまい、ムラになりやすくなります。
パールカラーは、マイカ(雲母)などが入ることで光を透過・屈折させる特長があります。
下地の色が透けやすいことから下地層・パール層・クリア層の3層で仕上げるのが基本となり、塗装の難易度は高いです。
このような特長があることから、初心者はムラが目立ちにくいソリッドカラー、もしくは下地の色が透けにくい色を選ぶのがおすすめです。
DIY塗装における塗りの基本

塗装作業においても、絵具で色を塗るイメージを捨てなければ失敗してしまいます。
下地作りが仕上がりの8割を決めるとはいえ、塗装の基本に沿って作業を進めなければ美しい塗面にはなりません。
そこで塗装における塗りの基本を、ここでおさらいしておきましょう。
一度に色を付けない
初心者が陥りやすい失敗は、一度に元の色を隠そうとしてしまうことが原因で起こります。
塗装の基本は「薄塗く塗り重ねる」で、初心者は3度塗りで仕上げるのがおすすめです。
1度塗りは捨て塗りとも呼ばれる工程で、色はほんのりとのる程度です。この段階では、下地の色がそのまま見えていても問題ありません。
2度塗りで全体に色がのりますが、塗料本来の発色ではありません。
そのため3度塗りで、本来の色を発色させるようにします。
このように3回に分けて薄く塗り重ねればタレと呼ばれる失敗も防げますし、特別な技法を使わなくても塗料本来の色が出せるようになります。
スプレーは外から外に動かす
スプレーを動かす際には、動きを止めることや折り返すことは厳禁です。
さらに吹き始めと吹き終わりは、必ず対象物の外側で行います。
吹き付けるときは水平かつ一定のスピードで動かすことがポイントで、端の部分に塗料がたまるのを防ぐことができます。
乾燥時間は必ず守る
重ね塗りをする際には、必ず乾燥時間を守りましょう。
特に下の層が濡れているうちに重ね塗りをすることは、塗装において厳禁です。
乾燥していない状態で重ね塗りをすると、膜全体がいつまでもやわらかいままの状態になったり、気泡が発生したりします。
基本的に重ね塗りのタイミングは数分から数十分後ですが、塗料の説明書には必ず乾燥時間が明記されているため、指示に従い正しく乾燥時間を取ることが重要です。
湿度80%以上の環境では塗らない
塗装では適切な環境下で行うことが必須ですが、その環境には湿度も含まれます。
塗装は充分に換気を行う必要がありますが、風が室内に吹き込んでくる状態は適切な環境とは言えません。
そのため風のない日を選ぶ必要がありますが、風がなくても湿度が高い状態は避けなければなりません。
特に湿度が80%を超えると、空気中の水分が塗膜に取り込まれてしまい、白化現象(仕上がりが白く濁る状態)が起こります。
また湿度の高い場所で扇風機などを使って乾燥させた場合も同様、白化現象が起きる可能性が高くなりますので避けたほうが良いでしょう。
もちろん雨の日の塗装も避けるべきです。
また、腰より低い場所での乾燥も避けるべきです。底に近くなればなるほど湿度が高くなるからです。
白化現象の原因になります。
一見きれいに仕上がったと見えた塗面も、乾燥中に水分を含むことによって気泡が噴き出してくるリスクがあるという事です。
そのため塗装をする際には、「晴れている」「風がない」「乾燥している」がすべて当てはまる日を選ぶようにしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
この記事では、「なんとなく塗って失敗」というDIY塗装初心者が陥る事象を防ぎ、論理的にプロ級の仕上がりを導き出す方法を解説してきました。
DIY塗装は、技術を身に着ければ成功するのではなく、知識と準備の時間を持つことで成功します。塗料を塗るということは、科学的なプロセスが必須です。
そして「色を付ける」ではなく、「強固な膜を構築する」という意識を持つことが重要になります。
「手間を惜しまず徹底して下地処理をし、塗装に最適な天候を見極めて、薄く重ねて塗っていく。」
この一見地味に思える塗装の鉄則さえ守れば、塗装初心者であってもプロ級の仕上がりを手にすることは可能です。
色を選ぶ際もまずは失敗が目立ちにくいソリッドカラーを選び、小さなパーツの塗装から徐々に塗装の範囲を広げていきましょう。
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